それでも生きるあなたへ

大きなひまわり

夏休みのともの法則

「社長、このお客さんどうしてこの保険に入っているんですか?」

「知りませ~ん?俺に聞かれてもぉ~」

保険業界は特殊な業界。そのお客さんのことはその担当者しか知らない。役員さんのお客さんのことを社長が知っているハズがない。でも新入社員が必死に顧客情報を整理している時にその言い方はないんじゃないの社長?俺に言わせれば「じゃあ誰に聞けばいいんだよこの野郎!」である。保険業界には厳しく守秘義務が敷かれているため退職した役員さんに聞くわけにもいかない。そんななか藁をもすがる思いで社長を頼ったのだ。その返事が上記のものだった。以降、困り果てて何度か社長に救いを求めたことがあったが全て

「知りませ~ん?俺に聞かれてもぉ~」

だったためもう社長に救いを求めるのはやめた。どうせわからないにしても一人ならわからないだけで済むが、社長を頼るとわからない上に不快な気分になるので損だからである。そこを切り取ってポロッと落としたら綺麗に無駄だけがなくなる、完全なる無駄損だからである。今後も気持ちよく仕事をしていく上で社長に質問をするまいと決めた。わからないにしても物の言い方があるし、言い方ひとつで部下に頼りにされるかされないかこういう所で差が出るのだということを今回の学びとした。

"まだいいやの向こう側"

あなたは保険の更新手続きを満期の何日前にやっていますか?近年は2ヶ月前更新を保険会社が推進しているため俺も励行していた。いまだに更新忘れの事故が多発しているからだ。事前にやっておけば安心だし、その後変更が発生してもお互い余裕をもって手続きできる。保険マンもお客さんも暇じゃないのだ。保険の更新手続きはお互いのスケジュールの良いところで余裕をもって終わらせるべきである。だがこの早期更新、昔は特に取り決めがなかったためのんびり屋さんの保険マンは保険が切れる前日とかに更新手続きを行っていた。

「まだ2ヶ月あるからいいや…

まだ1ヶ月あるからいいや…

まだ1週間あるからいいや…

もう1日しかないやんヤバいやん!!!」

私はこれを『夏休みのともの法則』と呼んでいる。更新作業は性格が出るので余裕をもって早めに終わらせる人とギリギリまで引っ張る人とに分かれる。『顧客は募集人に似る』の諺通りお客さんもそれに影響される。そこで周りの保険マンにインタビューを実施したところ、更新手続きを早めに終わらせる人は子供の頃やはり同じように夏休みのともを早めに終わらせていたタイプで、ギリギリの人は夏休みのとももギリギリまでやらずなんだったら始業式にも間に合わなかったタイプであることがわかった。

保険の更新手続きはギリギリまで引っ張ったところで得することは何も無く、むしろギリギリにやって書類ミスがあった時はアウトになるデメリットしかないので早期更新されることをオススメする。

夏休みのともの法則は保険だけでなく全ての事柄に当てはまる。その人がどのような人生を送るか、それはその人がどのように夏休みのともと付き合ったのかを考えればおのずと結果も見えてくる。早い話、人間の癖というものは一生続くものなのだ。ちなみに俺はギリギリ提出野郎だった。振り返ればいろんな場面でいろんなことをダラダラとギリギリまで引っ張っていた。サッサと提出すりゃいいだけの書類もなんだかめんどくさいんだよね。まだ日にちあるしいいやで机の上に放置。結局ギリギリに、しかもそんな時に限って他の突発的な用事が入ったりしてバタバタでイライラしながら汚い字で殴り書きにしていた。保険屋になりそれがいかに無意味でリスキーな事か知り、何よりダラダラした大人って見ていてカッコ悪かったので現在は改心している。反面教師となっていただいた同業者やお客様各位には心から感謝しています。ありがとう、あなた達のおかげで生き方を変えることができました。

いつか本気出す

退職された役員さんは幼少期、夏休みのともをギリギリまで放置される系チルドレンであった。悪夢である。『満期更新ゆとりの2ヶ月前!』が叫ばれる今日、彼はいまだに『満期更新1日前ギリギリセーフ!』の精神でスリリングな更新手続きを行っていた。と、いうことはそれに付き合ってきた、それに慣れた顧客が100を超える数いるということだ。卒倒しそうになった。役員さん退職後試しに満期2ヶ月前のお客さんに更新手続きのご案内をすると「早いね!まだ2ヶ月あるよ?まだいいよ」という謎のお断りを何件もくらった。ひどい時は「更新するよ!でもまだ2ヶ月あるから来なくていいよ」という謎が謎を呼ぶご回答を多数いただいた。いや更新するならいいやん、早く手続きさせてくれよと思ったが私も元・夏休みのともギリギリチルドレン。彼らの気持ちもわかる。特に理由は無いけど急かされたくないのだ。ゆっくりと地球が回転し、どうしてもやらなきゃならないその日が来るまでそっとしておいてほしいのだ。その日が来れば本気だす。大丈夫本気出したらちゃんとやるから…

余談だが、中学校の部室で将棋を指していたヤンキーの先輩が「俺が本気出したら歩が2回動けるんだぜ。」と豪語していた。その先輩なら軽く藤井聡太棋士に土をつけることができるだろう。

仕事の価値

更新手続きを引っ張ってもお互いなんのメリットも無く、かえってデメリットしか生まないことを粘り強くお客さんに説明。ご理解ご協力を求めていった。いきなりハイこれお願いしますでは新しい担当者が生意気言ってると拒絶反応が出る。人は変化が嫌いなのだ。よってこれはじっくり何年もかけてお客さんを説得していくプロジェクトになる。さらに役員さんは保険料の現金領収が多かったのでこれもお客さんに頭を下げご理解いただき全件キャッシュレスにした。現金領収すると速やかにコンビニに立ち寄り収納システムに入金する手間が生まれるからである。最初は抵抗感があったお客さんも「わざわざ銀行に行ってお金を準備していただく手間が省けますし、銀行引き落としに変えても費用は1円もかかりませんよ。」と説明すると「あらそうなの?じゃあそっちの方が得ね。」と保険料の支払い方法を変更していただけた。得なことが他にあるのに惰性で損なことを続けてしまうのは誰にでも当てはまる話。自分も気を付けねばと襟を正す。他にも同一のお客さんが複数の保険に加入している場合、たとえば1月、5月、11月と1年の中で散らばっている満期日をどこかの月に統一し、一度で全ての更新手続きを完了できるようにした。

2ヶ月前更新とキャッシュレス化と満期の統一、これら3本の矢で仕事の効率化とリスク回避に全力で取り組んでいたが社長は特にその効果に気付いている様子はなく、何か質問しても冒頭に書いた通りだったので入社早々こう申し上げることにした。

「社長、5年経ったら辞めますので後任を探してください。」