元保険屋さんが教える
正しい保険の選び方 ~その4~
『事業用保険』
- それでも生きるあなたへ BLOGS -
話題騒然!保険業界礼賛!金融庁お墨付き!島でございます。
前々々回、前々回、前回と個人用保険を解説してきたが、今回は『事業用保険』を取り上げる。経営者にとってはこの話の方が興味津々だろう。個人保険には存在しない実に様々な種類の保険があるが、特に代表的なもの、時代を象徴する新しいものをピックアップして解説したい。事業用保険といえど基本は個人用保険と同じく、
"その保険に加入する目的"
"その保険が必要な企業、不要な企業"
という2点をしっかり押さえておけば迷わないので大丈夫。ちなみにわたくしは本来こっちが専門なのでnoteで有料公開すべき質の高い記事をnoteのやり方がわからんので無料でここに書くが、文章に熱が入りすぎてまた気づいたら夜が明けていた、みたいなことにならないようシンプルでわかりやすい解説を心がけていきますよろしくお願いします。
※わたくしはあくまで"元"保険マンですので、詳しい保険の内容については保険会社か、お付き合いのある保険代理店の担当者に確認されてください。この記事は特定の保険会社の商品を推奨したり、募集するものではありません。
『事業用保険』の対象者
駆け出しの事業者が知らなかったらいけないので説明しておくと『事業用保険』と仰々しい名前ではあるが加入対象者は大企業や法人に限った話ではなく個人事業主や非営利法人も含まれる。
尚、「事業者」とはその事業を行う者であり、具体的にいうと法人の取締役、個人事業主、社団法人や非営利法人の理事長や理事のことを指す。平たく言うとその団体を経営している経営者たちのこと。そんな経営者たちが『事業活動上のリスクに備え』加入を検討する保険、それが事業用保険である。
様々な業種に特化した専門性の高い保険が主なので、逆にいうと個人保険以上に必要ない企業にはまったく必要ない、というかハマらない、という言い方が正しい。ご検討の際は本当にその保険が自社の事業活動に則しているか精査していただきたい。たまに生保のおばちゃん経由で入っているととんでもない保険に加入させられてる場合がある。この"生保のおばちゃん問題"についてはまた機会を改めて話そう。
会社の命運を握る『事業用保険』の種類
事業者は保険に入っていないとマジでたった1つの事故で会社が吹っ飛ぶ。泣きそうな顔の社長に何度もありがとうと言われてきたこの"元・凄腕法人専門保険マン"のわたくしが主な保険を解説していく。早速文章に熱が入ってきたので用心しながら進めていく。
任意労災保険
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「保険金が支払われる条件」
→事業主(会社の代表者)、取締役、従業員が労働災害により身体的損害を被った時。 -
「保険に加入する目的」
→見舞金の確保、労災保険の上乗せ、使用者賠償への備えなど。 -
「必要な事業者」
→業務に労災リスクが高く、高額になる労災保険の上乗せ費用・使用者賠償費用などの原資を保険で担保したい事業者。 -
「不要な事業者」
→高額になる労災保険の上乗せ費用、使用者賠償費用などに対し自社の資金で賄える事業者。 -
「ひとくちメモ」
これ専門中の専門だったので軽く8万文字くらい話してしまいそうだが落ち着いて整理しながら解説していく。
まず大きくまとめると、この保険は「会社の傷害保険」である。社長から社員、パート・アルバイトまで誰かが仕事中にケガしたら保険金が出ますよというもの。事業者がこの保険に入る理由は2つ。
1.福利厚生
2.企業防衛
ロジックは以下の通り。
「労災事故が発生し従業員が休業しても労災保険から支給される休業補償給付はお給料の約8割。2割足りませんよね?その分生活が苦しくなる従業員のためにこの保険を使って会社でお見舞金を準備して足りない分をカバーしてあげませんか?そうすれば話がこじれて使用者賠償で訴えられる可能性も減るし、もし訴えられても使用者賠償責任保険もセットになっているので会社を守ることができますよ。」
駆け出しの保険マンはこの文章をコピペしてスマホの待ち受けにして何度も何度も復唱して立て板に水の如く流暢に話せるようになってほしい。
任意自動車保険は「自賠責保険だけでは補償が充分でないから」存在するのであるし、任意労災保険も「労災保険だけでは補償が充分でないから」存在するのだ。ちなみに任意労災保険の別名は"労災の上乗せ保険"だし、任意自動車保険の別名も"自賠責の上乗せ保険"である。知ってた?
『使用者』とは事業者のこと。『被使用者』とは従業員のこと。負傷した従業員が、労災事故を防げなかった使用者の責任を追及し賠償してもらうことを「使用者賠償」といい、任意労災保険の中に特約としてセットされるものが『使用者賠償責任保険』である。つまり従業員から訴えられてしまった事業者を守るための保険。最近は賠償金の取りっぱぐれがないよう会社と連名で取締役全員を訴えてくるので事業者を守るというより会社を守るといったニュアンスが強い。会社、取締役に賠償能力がなければ会社は吹っ飛んでしまうからね。
すなわち、任意労災保険とは前述した通り福利厚生と企業防衛を2段構えで実装する保険なのだ。よくできている。保険としてとても美しい商品だと感動するが一般人からしたら何言ってんだコイツという感じだろう。ちなみに中学時代の英語の女性教師はすなわちを「すなはち」と書いていた。英語より先に日本語を学んでほしい。
事業賠償責任保険
-
「保険金が支払われる条件」
→事業活動により第三者に損害を与え法律上の賠償責任を負った時。 -
「保険に加入する目的」
→賠償金の確保。 -
「必要な事業者」
→業務活動により第三者に損害を与えるリスクが高く、高額な賠償金を保険で担保したい事業者。 -
「不要な事業者」
→事業活動における賠償金を自社の資金で賄える事業者。 -
「ひとくちメモ」
お仕事にミスや事故はつきもの。その際の第三者への治療費や修繕費・商品買い替え費などを補償するこの保険。個人賠償責任保険の企業版である。たとえば一日中公園の鳩を眺めているだけのお仕事なら第三者に損害を与えるリスクは少ないが、クレーンが倒れたり、解体中の建物の破片が歩行者を直撃したりするリスクの高い建設業では任意労災保険同様マストな保険になっている。また、そのような不測かつ突発的な事故に備えたものだけでなく、保険代理店もそうだが特に仕業の方々に御愛顧いただいている『業務過誤賠償責任保険』というものもある。これは業務で行った説明が誤っていて損害請求を受けた時などに使える保険である。様々な業種にニーズがあるため、近年では特約化され事業賠償責任保険にひっつき多業種に対応できるようになっている。
自社の事業活動により第三者に損害を与える確率はどれくらいで最悪いくら賠償するのか?その辺を考え保険料との費用対効果を吟味して保険採用を判断してください。
経営者保険
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「保険金が支払われる条件」
→事業主に身体的損害が発生した時。 -
「保険に加入する目的」
→事業主が戦線離脱、リタイアした時の損失に備えて。 -
「必要な事業者」
→事業主が戦線離脱、リタイアした時の損失を保険で担保したい事業者。 -
「不要な事業者」
→事業主が戦線離脱、リタイアしても損失を自社の仕組みや資金でリカバリできる事業者。 -
「ひとくちメモ」
事業主と会社は一蓮托生。代表取締役のほとんどは法人の連帯保証人になっているし、個人事業主がリタイアしてしまったら事業継続が難しくなる。事業主の危機=会社の危機なのである。この保険はそんな一大事に充分な事業継続費を補充し、次の代表者が決まるまでの困難を乗り切るためのもの。次なる代表者がおらず閉業するとしても借入金の返済や会社整理費用に充てることができる。自分自身この保険に加入していない企業が社長の突然死によりあっという間に閉業して従業員が路頭に迷った現場を見たことがあるので世の事業主の皆様におかれましてはこの保険の重要性をよくよく知っておいていただきたい。
「生命保険はたらふく入ってるからいらないよ!」
と言う社長がいるが、話を聞いたらそれは個人用死亡保険で、つまり社長の死後家族を食べさせるための『お父さん保険』または『お母さん保険』である。『経営者保険』は社長不在の企業に運営費や従業員のお給料などの必要経費を補充するものなので金額も役割も全然違う。
もうあんな悲しい光景は見たくないので、経営者の皆さんはご自身がいなくなった後の会社のこともしっかり考えて対策してあげてください。
役員賠償責任保険
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「保険金が支払われる条件」
→法人の取締役が経営上の損害賠償責任を負った時。 -
「保険に加入する目的」
→取締役の保護。取締役ご遺族の保護。 -
「必要な事業者」
→取締役の経営上の損害賠償責任について保険で担保したい事業者。 -
「不要な事業者」
→取締役の経営上の損害賠償責任について自社の資金で賄える事業者。 -
「ひとくちメモ」
この保険が活躍するリアルな事例は3つ。
1.取締役が経営上の損害賠償請求を受けた。
2.社長交代を狙う身内から訴えられ裁判費用が必要になった。
3.引退した取締役の財産を相続した遺族が過去の経営者責任を問われ賠償金が必要になった。
ある会社に取締役が数人、代表取締役が1人いたとする。それらの人は「役員=経営者」と呼ばれ、全員が経営責任を持っている。たとえば明らかに会社に不利益をもたらすような経営方針を採用し、実際に損害が発生し賠償請求を受けたら役員全員で対応せねばならない。会社というのはそれら役員が相談し、決定し、責任を持って舵取りするよう法律で決められているからだ。1.のパターンがそれにあたる。
2.についてはそんなん昼ドラじゃねぇんだからと笑い飛ばされそうだが実は結構ある。やはり人間お金が絡むと家族といえど戦国時代の様相を見せる。彼らは社長の転覆を目論んでいるので、いつか来る謀反に対してこの保険で備えておきたいという社長も多い。社長って大変。
3.については経営責任の時効は10年といわれているのでその間は退職しても気の休まる暇はない。役員賠償責任保険はそんな元役員の引退後の安寧のために活躍する保険でもあるが、もっと怖いのは元役員が亡くなって財産を相続したご遺族にある日突然過去の経営責任を追及した損害賠償請求が届くこと。家族からするとなんのこっちゃだが実際にその請求が通ればご遺族は多額の賠償金を支払うことになる。財産と一緒に経営責任も相続しているからだ。これは本当に落とし穴で、今は勇退してのんびり盆栽いじりでもしている元役員さんに教えてあげると血相を変えて元勤め先に役員賠償責任保険に入るよう説得しに行くだろう。
役員賠償責任保険とはそういうもの。経営を担ってきた猛者たちの責任を支える存在です。
サイバー保険
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「保険金が支払われる条件」
→自社のシステムがサイバー攻撃を受け被害を負った時。 -
「保険に加入する目的」
→被害からのいち早い復旧費、原因究明費、被害者への賠償金確保のため。 -
「必要な事業者」
→サイバー攻撃からの復旧費用、損害賠償金を保険で担保したい事業者。 -
「不要な事業者」
→サイバー攻撃からの復旧費用、損害賠償金を自社の資金で賄える事業者。 -
「ひとくちメモ」
時代を象徴する新しい保険『サイバー保険』。名前が微妙にダサいのが良い。しかし中身はとても重要でサイバー攻撃からの復旧費、個人情報が漏洩した際の賠償金、踏み台にされ取引先に自社名義でウイルスを飛ばされた時の賠償金などに対応できる。もちろん話題のランサムウェア(身代金型マルウェア)の被害にも対応できるが、身代金は基本的に対象外なので払っちゃいけないよ。
サイバー攻撃を受けた会社のPCやサーバーは専門業者が会社に1ヶ月前後常駐しウイルスの除去や被害の範囲・原因の究明にあたる。これをデジタル・フォレンジック費用(サイバー被害調査費用)というのだがなんせ業者が常駐してパソコンを毎日調査するほど大ごとなので費用も最低100万円以上かかる。パソコンの台数やサーバーの台数が多ければ調査範囲も広がるため費用は倍!さらに倍!ととんでもない金額になる。でもそれをしないことにはウイルスが潜んでいるかもしれないパソコンを業務で使うわけにもいかないので結局フォレンジック費用を支払い一日も早い業務再開を目指すしかない。ちなみにフォレンジック費用の目安はパソコン1台100万円前後、サーバー1台300万円前後である。
最近大きな会社が何社かやられて復旧までにだいぶ時間が掛かったでしょ?あれはそういうこと。サイバー被害からの復旧は一筋縄ではいかないのである。
ハラスメント保険
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「保険金が支払われる条件」
→規定のハラスメント行為による裁判対応費、損害賠償金が発生した時。 -
「保険に加入する目的」
→ハラスメント行為による裁判費用、賠償金の確保。 -
「必要な事業者」
→ハラスメント行為による裁判費用、賠償金を保険で担保したい事業者。 -
「不要な事業者」
→ハラスメント行為による裁判費用、賠償金を自社の資金で賄える事業者。 -
「ひとくちメモ」
これまた時代を象徴する新たな保険…とは言っても10年以上前から存在するので保険としては中堅のような存在感で広く認知もされている印象だ。発売された当初はセクハラに備えた保険だったがその後パワハラという言葉が生まれ、マタハラだスメハラだナニハラだと次々に新種が登場し「ハラハラハラハラうるせぇよ!」と研修中保険屋仲間と言っていたのを思い出す。
上司から部下へのハラスメント、同僚へのハラスメント、部下から上司へのハラスメントなど次々発生する事案に対応できるよう目まぐるしくマイナーチェンジを繰り返している忙しい保険でもある。世の権利意識の移り変わりを激しく反映した商品。裁判費用や賠償金に備えることができる。
実はハラスメント保険と、前述した使用者賠償責任保険の最大のメリットは似ていて、保険金での支えは勿論のことながら"専門家による外部窓口の設置"ができることである。こういった案件に対しプロ中のプロである保険会社や我々代理店が御社の代わりに対応する。もちろん非弁行為(弁護士しか行ってはいけない権限を侵害すること)となるので示談交渉はしないが、お相手の要求をしっかり聞いて事を荒立てないように上手に収束させる。まさに保険屋の真骨頂はココにあり、腕の見せどころである。特にわたくしは得意であったので相手がどれだけ怒っていようともお客様である社長に「後は全部任せといてください。」とだけ言ってお相手のところに乗り込み円満解決してきた。
解決金ゼロ円。
保険屋ってお得じゃない!!?
大事なことなので大声で言いました。
荒れた場を素人さんが解決しようとすると絶対に更に荒れるので、場慣れした我々保険屋に早々にバトンタッチして本業に専念していただきたい。そのために保険料をいただいているのだし、我々がどれだけ活躍するか楽しみに待っていていただきたい。
でもだからこそ"掛け捨て"と言われると腹立つんだけどね!!
24時間365日すげぇプロがあなたを守ってるんだぜ!ということにもう少し気づいてもらえたら嬉しい。
…と、ハラスメント保険、使用者賠償責任保険について解説してきが、保険契約者が"専門家による外部窓口の設置"をできるのはなにもこの2つの保険だけでなく、全ての保険で可能なことである。
自動車事故の対応だってそうじゃん。保険屋に任せてたら勝手に円満に話まとめてきてくれるでしょ?仮に自分で対応したら何をいくら弁償すれば良いかわからないし、お相手の家に何度も何度も足を運んだり毎日毎日怒りの電話が掛かってきたりするの嫌でしょう?
ハラスメントや使用者賠償案件の時も同じく百戦錬磨の保険屋がカンカンに怒っているお相手の所に平然と行って勝手に話まとめてくるから心配無用です。でもこれを自社スタッフでやっちゃうと担当者の心が病んで休職に追い込まれたりするのです。オジサン何件もそういうの見てきたから本当だよ。保険屋からしたらなんちゃない案件でも、慣れてない人からすると怒り狂っている被害者や家族との対話は心が押し潰されるほど苦しいのよ。だからもうそれプロに任しちゃお!と早々に我々にバトンタッチしてまた楽しい日常に戻ってほしい。保険はそのために存在するのだと思うし、保険屋もそのために存在するのだから。
あ、窓口代も出張対応費もリスクコンサル料も不要です。毎月いただいている保険料に含まれておりますので。
保険屋ってお得じゃない!!?(2回目)
事業者用保険まとめ
はい。というわけで事業者用保険について解説してまいりました。本当は任意労災保険の美しさ、隙のない二重構造、洗練された病気補償などあと9万文字ほど語りたいのだが保険屋の研修であってもそんなの御免被りたい人が多いと思うのでこの辺でお開きとしたいと思います。
"どのような目的でその保険に入るのか?"
"その保険は我が社の事業に必要なのか?"
考えることは個人用保険と同じです。目的も該当するリスクも無いなら入る必要ないです。
事業にまつわる損害賠償ってのは本当に金額が大きいから御社の安定経営のため、必要な保険をまるで鎧のように着込んで双肩に従業員とその家族の重みを感じつつ今日もお仕事頑張ってください社長。そしてもっと保険屋を頼りにしてくださいね。タダで動く我々だからあまり気にされることはないけど、保険屋って結構使える奴らですから。
きっと、御社の悩みを軽くしてくれると思いますよ。